鈴木牧之 北越雪譜の世界
鈴木牧之
鈴木牧之は『北越雪譜』の作者として有名です。
『北越雪譜』は,牧之がまだ若い頃に江戸に出た時,江戸の人が雪国の雪の多さを知らないことに驚き,越後の雪についての著述を始めたものでした。
著作は完成したものの,出版にこぎつけたのは牧之が40歳に近づいた頃でした。戯作者・山東京伝の弟の山東京山の協力を得てのことでした。
越後の雪,越後の雪にまつわる習俗,雪国の暮らしや自然・生態の話などをまとめ上げた『北越雪譜』は当時,江戸でベストセラーになったそうです。
牧之は江戸自体の中期に越後国の魚沼郡の塩沢(現南魚沼市)で生まれました。家は裕福な商家で,越後縮の仲買などを営んでいたという。父の影響や街道筋に立ち寄る文人達との交流を通じて,牧之は俳諧や書画に引き込まれていきました。
牧之は,単に雪国の風俗を著すことではなく,雪そのものにも目を向け,下総古河の城主土井利位(号は許鹿)らが著した『雪花図説』にある「雪花五十五品」から雪の結晶の図を引用したりしています。
雪の結晶に色々な形があることが,この頃から研究されて分かっていたようです。
北越雪譜初編上巻
「顕微鏡を以て雪状を審に視たる図」
北越雪譜には,他にもたくさんの挿絵が掲載されています。多くの挿絵は山東京山の次男の山東京水(山東京伝の甥)が描いています。
ただし,牧之が描いた原画をもとにして,山東京水が描いているため,ややおかしな点も見受けられます。京水自身も,雪を知らないにもかかわらず描いていることに,不安に感じていたようで,雪の画には誤りがあるかも知れないが,その誤りは自分の責任で,編者の責任ではない,と正直に述べています。
こうした「北越雪譜」を野島出版は,原本さながらの「複製版 北越雪譜」を発行しています。和綴じ・帙入りの,江戸時代に発行された手製の本を彷彿させるつくりです。
「複製版 北越雪譜」野島出版発行(和綴じ・帙入り)
(「複製版 北越雪譜」のページへ)
この「北越雪譜」は,くずし字で書かれているため,一般には読みにくいので,野島出版は活字に直し,コンパクトに収めた新書版の「校註 北越雪譜」も発行しています。
さらに,現代語に直した「現代語訳 北越雪譜」も発行しています。
「北越雪譜」を現代の言葉に全訳しました。この書を一冊丸ごと現代語訳したのはこれが初めてで,しかも、漢文で書かれた序文から,挿絵に入れた文字まで翻字し、訳しました。体裁は図書館や長期の保存に耐えうる愛蔵版としました。
鈴木牧之の本
野島出版では「北越雪譜」の他にも,鈴木牧之に関する本を発行しています。文人・鈴木牧之の才能を伝える著作をお楽しみください。
「現代語訳 鈴木牧之の小説」
鈴木牧之が書き残していた三編の小説を現代語訳しました。
●民謡に材をとった「小説 広大寺躍」、
●豊かな知識をもとに書いた「塩冶判官一代記」、
●実録の秋山記行と比較してみると楽しい「戯作 秋山記行」
の三編が収録されています。
よどみなくこれらの物語をすすめていく牧之に、われわれの知らない才能を持っていたことに気づかされます。
「鈴木牧之の生涯」
雪国越後の生活を描き、現代にもなお読み継がれている『北越雪譜」は,実は出版に至るまでに多くの挫折があり、四十年の歳月を必要としました。さらに、生涯に娶った6人の妻との葛藤、長男の夭折など、数奇な運命のもとに生きた鈴木牧之の生涯をとらえた本書は、多くの人々に感動を与えることしょう。また,「秋山記行」などの著作にも触れ、牧之が生涯親しんだ俳階についても、一章をあてて解説しています。
「座右の鈴木牧之」
著者の高橋実は,大学の卒論で「北越雪譜」に取り組み、その体験を小説に著しました。同人誌に寄稿したその小説『雪残る村』は、思いがけず芥川賞候補となりました。以来40年、鈴木牧之の研究をつづけてきた著者が、「北越雪譜」のこと、「秋山記行」のことなど、牧之に寄せる思いの集大成として本書を著しました。「鈴木牧之全集」未収録の「短冊扣帳」を翻刻しました。序文は井上慶隆氏。