良寛 ハリコロバシ


 生前の良寛の行いを集め記した書として『良寛禅師奇話』が知られている。これは、蒲原郡牧ケ花村(現在、新潟県西蒲原郡分水町牧ケ花)の庄屋、解良栄重(けら・よししげ)が、良寛の日常について人から聞いたこと、自分で見聞きしたことなどを書き留めたもので、良寛研究の第一級史料とされている。
 この『良寛禅師奇話』の中に、栄重自身が、三条の宝塔院に泊まって、隆全和尚について手習いをしていた。たまたま隆全と親しかった良寛も来て泊まった。栄重は良寛に「わたしに菅原道真公の画を書いてください。そうしないとこのものが化けて今晩、良寛様のところにいきますよ」と持っていた玩具のハリコロバシ(三角達磨)を見せた。良寛はハリコロバシを見て怖がった風を見せ、菅原道真の尊号と神詠を書いて栄重に与えた。栄重は後年、良寛の「おきあまがりこぼしに題す」という詩を読み、自分の行いを恥じたという。
三条とその周辺では、当時2月25日を天神講といって、菅原道真公の画賛を掛け、鯛などを型どった粉菓子を供え、その前で習字や読書をする習わしがあった。
 本図は、大正7年に東京で開かれた「良寛禅師遺墨展」に出品され、初めて世に紹介された。その15年後の昭和8年、西蒲原郡国上村大字中島(現在、西蒲原郡分水町中島)の大蓮寺で開かれた「寛師遺墨展」に出品されたが、この後一般に公開されることはなく、まぼろしの作品になっていた。
 良寛の作品は墨一色で書かれることが多いが、この図は薄墨、朱が使ってあり、この点でも珍しい作品と言える。

 軸は上半分に「おきあまがりこぼしに題す」の七言絶句、その下に墨と朱、薄墨を使ってハリコロバシが描かれている。


【大意】

人に投げられようと、笑われようと、一つとして気にならない。
人生をあなたのようにして過ごせば、世間は何の差し障りもない。


 この画賛は良寛晩年の作と考えられる。枯淡の域に達した良寛の筆は、伸びやかで力強く、勢いがある。2行目の「心地」の“地”を初めは「事」と書き、これを抹消して右に小さく「地」と書き直している。

 達磨は柔軟な線で描かれ、顔の表情は天衣無縫といってよい。周囲にほどこされた薄墨は、よく雰囲気を出している


定 価 本体71,297円+税・送料無料
寸 法 縦161.5×37.4cm(本紙寸法90.0×27.0cm)

表 装 風帯付三段大和表装(上・下、薄茶地玉入りぱー。中廻し、薄藤色地花紋唐草緞子。風帯・一文字、朱褪地花鳥唐草紋金襴。軸、黒溜塗軸)

用 紙 本紙、楮和紙。裏打紙、手漉き美濃紙。

印 刷 本紙、カラーオフセット多色刷。桐箱、シルクスクリーン印刷。

箱   桐箱、府中産上柾目印籠蓋。外箱、タトウ箱。
(箱書きは「ハリコロバシ」ゆかりの三条市東裏館、宝塔院三十六世桑原良修師の筆による)

解説書つき。